『もらとりあむタマ子』公開記念インタビュー

【対談】山下敦弘×高橋栄樹 アイドルから女優へ――その過渡期を見つめた監督たちが語る“前田敦子”

1311mtamako_bamen_text.jpg(C)2013『もらとりあむタマ子』製作委員会

──山下監督は『苦役列車』で前田さんとお仕事されてますが、あのときに彼女の魅力を強く感じられたのですか?

山下 あのときは前田さんの撮影日数は短かったし、まだAKBのメンバーだったから休憩中は車のなかにいたりして、あまり接しなかったんです。だけど、芝居が“孤立”していると思いました。若手ではかなりキャリアがある森山未來君と高良健吾君が相手だから、当初は、圧倒されたり、芝居が影響を受けるかなと思ったんです。だけど、まったくそういうことがなかった。『苦役列車』では、ひとり浮いているキャラクターだったのでそれがとてもハマったんです。堂々としているというか、協調性がないわけでもないんだけど、なにか凛として孤立している感じがあったんです。

高橋 独立独歩というか、独自の時間と空間のペースを持ってるんですよね。でも、それが周囲をかき乱しているわけでもない。

山下 そうなんですよね。周りが気を遣うとか、そういうことではないんです。親子の猫がいたら、離れたところに一匹いるような感じで、ついつい目がいっちゃうみたいな雰囲気があるんですよ。

──撮影は、9カ月間にわたって各季節に行われたそうですね。

山下 普通は一カ月くらいに集中してキャラクターを創りあげたりしますが、これほど長いスパンの中で創るのは珍しいです。その期間、ずっと俺の中にもどこかにタマ子という存在があったし、前田さんもほかの仕事をやりながらもタマ子があったと思うんです。そうすると、途中から撮影が日常になってくるんですよ。現場で会うと、あっちゃんも化粧っ気ないし、地方だからあまりギャラリーもいないし、居間でダラダラして居眠りもしちゃう。最近は、ポスターやテレビの前田敦子を観ると、タマ子が化粧しているみたいに見えますからね(笑)。「タマ子、頑張ってるなー」って。

高橋 撮影は脚本通りなんですか?

山下 完全に脚本通りです。

高橋 アドリブはなかった?

山下 まったくなかったです。『苦役列車』も『タマ子』もいっさいなかったですね。あっちゃんは、自分流にアレンジをしてこないんですよ。現場で質問されたのも、1、2回だけでしたね。でも、脚本に書いてあったことや俺が言ったことを、マックスにやる。それが面白いんですよね。
【後編へ続く】
(構成/松谷創一郎)

1312_mtamako_poster.jpg(C)2013『もらとりあむタマ子』製作委員会

■『もらとりあむタマ子』
監督/山下敦弘 脚本/向井康介
主題歌/星野源 出演/前田敦子、康すおん、富田靖子ほか
配給/ビターズ・エンド
11月23日より新宿武蔵野館ほかにて全国公開中
http://www.bitters.co.jp/tamako/


1312_mtamako_bamen1.jpg(C)2013『もらとりあむタマ子』製作委員会

東京の大学卒業後、地元・甲府の実家に戻り就職もせずにぐうたら暮らすタマ子(前田)。父と2人暮らしながら、家事もしなければ家業のスポーツ店の手伝いもせず、日がな一日マンガを読んだりゲームをしたり、お菓子を食べたりしているだけのまさに“モラトリアム”を送る彼女とその周囲に起きる少しずつの変化が、秋から夏へと一巡りする季節の中で描かれる。


■山下敦弘(やました・のぶひろ)
1976年、愛知県生まれ。大阪芸術大学映像学科の卒業制作として完成させた初長編作『どんてん生活』でデビュー。03年『リアリズムの宿』、05年『リンダリンダリンダ』で一躍脚光を浴び、07年『天然コケッコー』で第32回報知映画賞・最優秀監督賞を史上最年少で受賞した。近年の作品に『マイ・バック・ページ』(11年)、『苦役列車』(12年)。

■高橋栄樹(たかはし・えいき)
1965年、岩手県生まれ。大学生時代に第2回ビデオテレビジョンフェスティバルでグランプリを受賞。凸版印刷入社後、MVを中心に映像ディレクターとして活躍する。THE YELLOW MONKEYのPVを数多く手がけ、彼らの主演映画『trancemission』(99年)で映画監督としてデビューを果たす。07年に「軽蔑していた愛情」で初めてAKB48のMVを撮り、以降彼女たちの代表曲を多数撮っている。最新作は、THE YELLOW MONKEYのドキュメンタリー『パンドラ ザ・イエロー・モンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE』(12月4日DVD&Blu-ray発売予定)。

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