パチンコの『エヴァ』は完全に終わった!?  アニメのファン層を拡大した『CRエヴァ』に起こった異変

 正直なところ、パチンコ台として見れば、まずまずの台であり、少なくとも凡台、個人的には良台だとすら思っている。

 しかし、『エヴァ』というコンテンツのファンとしていうならば、「ヱヴァ8」は、『エヴァ』であることをやめた台だ。映像はもちろん豊富だ。チャンス時に出てきて液晶を覆う巨大な初号機の約物(物理ギミックのこと)もできが悪いとは思わない。だけど、どれもエヴァという作品とはかみ合っていない。ハッキリ言えば、「パチンコのために『エヴァ』が取って付けたような使われ方」をしている。

「ヱヴァ8」が変わってしまったのを象徴するのは、大当たり時に登場する約物だろう。使徒殲滅時に現れる巨大な十字爆発は、ご存じの通り『エヴァ』を象徴するギミックのひとつだ。「ヱヴァ8」では、大当たり時にこれを約物で再現しているのだが、これが致命的にダサい。よくわからない音とともに、画面中央に2本の板のような約物がもっさりした動きで現れてクロスし、十字をかたどるのだが、どう見ても『エヴァ』の十字爆発には見えない。しかも、その後にはなぜか音程の外れたチャルメラ音のようなメロディが流れる。これに至っては『エヴァ』となんの関係性も見いだせないものだ。

 この演出を見たとき、「ああ、パチンコ・エヴァはもう『エヴァ』をやめたんだ」と思った。大当たり時の派手な音と約物は、今のパチンコのトレンドだ。単純にパチンコとして見るならば、この演出はそれなりに中毒性があり、慣れてくるとこれはこれで快感になってくる。だが、それは決して『エヴァ』ではない。

『CRエヴァ』は、パチンコらしさではなく、『エヴァ』らしいことを目指した台だった。パチンコのためにキャラクターを間借りする「キャラパチ」からの脱却というアニメ台の革命家であった。それから9年たって、「ヱヴァ8」がたどり着いたのは、『エヴァ』のキャラクターに、パチンコのシーンを演じさせる「キャラパチ」への回帰だったというのは、皮肉としかいいようがない。

 繰り返すが、一パチンコユーザーとしては「ヱヴァ8」は決して嫌いな台ではない。だけれども、アニメ・マンガのファンとしては「ヱヴァ8」は、もはや興味の対象ではなくなってしまった。革命家としての『エヴァ』の役割は、現行の「ヱヴァ8」をもって完全に終わったのだと思う。

 だから、シリーズ8作目のこの台を打ちながら、心の片隅でいつも思うのだ。「さよなら、エヴァ8号機、お役目ご苦労さん」と。
(文/小林聖)

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