パチンコの『エヴァ』は完全に終わった!?  アニメのファン層を拡大した『CRエヴァ』に起こった異変

 そして、「全回転」という大当たり確定演出。初代では突然の暗転から「2000年 南極大陸」の文字が表示され、歓喜の歌とともにスタートするというものだが、シリーズを重ねるごとにバリエーションが増加。特にシリーズ第4作の「使徒、再び」では「加持全回転」と呼ばれる演出があり、「いやはや、波乱に満ちた船旅でしたよ」という初登場時のセリフから始まり、スイカ畑での会話ほか、加持の名シーン集が流れる。1分弱に及ぶこの演出は、「よう、遅かったじゃないか」という加持のセリフと1発の銃声で幕を閉じる。そして、一瞬の間を置いて流れ出す「甘き死よ、来たれ」。数あるパチンコ・エヴァの演出のなかでも、とりわけ完成度が高く、ファンの間でも“神話”的人気を誇る演出だ。加持というキャラクターのかっこよさも相まって、実際に実機で目にすると思わず泣きそうになってしまう。原作ファンであればあるほど、この演出には心を奪われるだろう。この「加持全回転」は、まさに加持リョウジのPVといっていい。

 第1回で触れたように、パチンコというメディアは、原則として時間軸を持たないため、物語を再現するには向いていない。それを自覚してか否か、パチンコ・エヴァは、物語を再現するというよりも、PVの詰め合わせとすることで、『エヴァ』を知らない層をも取り込んできたのだ。事実、パチンコ化をきっかけに、『エヴァ』を視聴する中高年が増えたという話もある。そして、パチンコ内のアニメをPVにすることこそが、『CRエヴァ』を“エヴァ”たらしめてきた。

 だが、革命家としてのエヴァは、今年ひとつのターニングポイントを迎えた。今年7月より稼働している第8作目の「ヱヴァンゲリヲン8」によって。

 何しろ、パチンコ・エヴァは10年近く8作もの台をひとつの題材で作ってきたのだ。第2作「セカンドインパクト」で旧劇場版、第6作の「始まりの福音」から新劇場版(現在最新作で使われているのは「序」「破」までの2作品分)の映像が加わったとはいえ、それでも映像素材が足りなくなるのは自明のことだ。

 だからこそ、パチンコ版ではシリーズの途中から弐号機がヤシマ作戦に挑んだり、零号機、初号機、弐号機がそろい踏みでシャムシェルと戦ったりする、オリジナルアニメのリーチが加えられることもあった(余談だが、シャムシェル対エヴァ3機のアニメ、今見てもアスカや綾波の顔が微妙に違和感があってやや気持ち悪い)。

 そういう意味で原作を踏み越える演出はシリーズを重ねるなかで増えていき、ともすればパチンコ・エヴァの世界はひとつのパラレルワールド化していた。そして、マンネリという声も上がり、第6作の「始まりの福音」は2ちゃんねるのパチンコ板で、その年の「糞台大賞」に選ばれるほどだった。「糞台大賞」自体がユーザーの恨み節含みの側面があり、どれほど適正な評価と呼べるかははなはだ疑問ではあるが、「福音」以来、エヴァの圧倒的な人気に明確な陰りが見えたのは事実だ。

 だが、それでも映像コンテンツとして見たとき、根底には初代の目指した「エヴァの再現」という姿勢はあり続けたと思う。パチンコ台としてのスペックや演出に多少難があっても、“エヴァのPV”的な作りという本質的な姿勢は一貫していた。

 だが、「ヱヴァ8」は、明確に別のものを目指す台だった。

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