前田日明から見た「三沢光晴の死、そしてプロレスの未来」

前田日明から見た「三沢光晴の死、そしてプロレスの未来」の画像2

──プロレスから物語性がなくなって、代わりに技だけが過激になっている。前田さんが新日本にいたころは、そうした対立の構図や設定を専門に考える人がいたんですか?

「いない、いない。誰も考えてない。選手が勝手に考えてやるんですよ。そういう感覚をみんな持っていて、みんなが自分のほうに周りを引きずろうとする。それで、いちばんその力が強いヤツがみんなを引きずっていくんだよ、無理やり」

──昔はレスラーそれぞれが「こうしたら盛り上がるのに」と考えていたと。それは、今の選手には足りない部分。

「足りないよね。そういった意味では(キックボクシングの)魔裟斗なんか最高です。興行を盛り上げるってことをよく分かってる。いい試合を見せるだけじゃ客は付いて来ないんですよ。本当は、いろいろ考えてやればね、ちょっと動くだけで、何気ない技でも盛り上げられるんです。パンチ一発でも客を『おおっ!』と言わせることができるんですよ」

──選手の体力面ではどうでしょうか。

「今は選手のコンディションも昔より悪くなってる。みんな、練習をしないんだよね。新日本に関して言えば、山本(小鉄)さんとか小林(邦昭)さんに言わせるとね、今の若手は全然ダメ、本当に練習しないって」

──資質という部分で言えば、今回の事故を受けて、全日本、新日本、NOAHの3団体で統一のプロレス・コミッションを作って、ライセンス制を敷こうという動きもあるようです。プロレスラーのライセンス制度というのは、現実的なのでしょうか。

「今は……ムリだと思うよ。だって、じゃあ『ハッスル』はどうすんの? っていう話になる。芸能人出るじゃん。あれはもうプロレスラーじゃないよね。それに『ハッスル』だけじゃない。アントニオ猪木がタッキー(滝沢秀明)とプロレスやっちゃったじゃない(00年3月14日/横浜アリーナ)。よく『前田日明がプロレスを壊した』なんて言われるけど、そうじゃない、アントニオ猪木が壊したんですよ。タッキーとやった時点で、観客もガッカリしたし、選手もガッカリしたし、俺も涙が出るほど悔しかったよ。猪木さんが何を、金のためにこんなことしてんの、って。プライドはどこにいったの、って。プロレスであれが許されると、もう誰も『ハッスル』のことなんて言えない。『ハッスル』もプロレスだって言うしかない。そしたら、ライセンス制なんてムリですよ」

──確かに、プロレスという言葉はすごく幅が広いですよね。UWFもハッスルもプロレスだし、電流爆破のFMWや、蛍光灯でバンバン殴る大日本もプロレスと呼ばれます。

「だからね、本当に統一コミッションで何かやるんだったら、レスラーになるための基礎的な教育だとか、小さな団体が興行に医者を連れて行く余裕がないんだったら派遣してやるとか、そういうことから始めたほうがいい。その前に、レスラー、レフェリー、関係者をみんな集めて、今回の三沢の試合を見せなきゃいけない。なんで大ベテランの三沢が死んだのか、みんなが試合を見て考えなきゃいけない」

──ファンの側から、何かできることはあるんでしょうか。

「ファンもね、やっぱり声を上げていかなきゃいけないんですよ。『三沢ありがとう』だけじゃダメで、『三沢がどうして死んだか』とね、声を上げていくことだと思いますよ。今は本当に、プロレス・マスコミがプロレスを一番ナメてるから、あいつらにプレッシャーをかけてやればいいんですよ」
(撮影=田附愛美/2009.06.25日刊サイゾー既出)

前田日明
1959年、大阪府生まれ。77年に新日本プロレス入団。エース候補として渡英し、帰国後、華麗な技と甘いルックスで人気レスラーになる。84年に「UWF」、88年に「第2次UWF」を立ち上げる。解散後、91年に総合格闘技団体「リングス」を設立、日本に総合格闘技を本格的に根付かせることになる。その後、プロレス団体「ビッグマウス・ラウド」、総合格闘技「HERO’S」のスーパーバイザーなどを務め、現在はアマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER」を主催。

前田日明から見た「三沢光晴の死、そしてプロレスの未来」のページです。おたぽるは、その他プロレス・格闘技の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!