■ミスボーグは、男の子にとってのセクスアリス
――井口監督の表情も、今日はキリッとされてますもんね。井口版『ザボーガー』ですが、悪の組織シグマの手先のミスボーグ(山崎真実)が輝いていますね。見事なほどの”悪の華”っぷり。笑顔でムチを打つシーンなどの山崎真実の表情は今まで見せたことのない新しい顔でしょうね。
井口 ありがとうございます。山崎さんとは一度、WEBで一緒に仕事をしたことがあり、そのときに「動物的勘の持ち主だなぁ」と思ったんです。山口雄大監督の短編映画『魁!みっちゃん』(09)に主演して、ジャッキー・チェンばりのアクションを披露してたんです。そのギラギラ感がすごく良かった。今回のアクション監督のカラサワ イサオさんは『魁!みっちゃん』も手掛けていて、「山崎真実はすごい。坂口拓を本気で殴って『参った』と言わせたのは男も女もアイツだけだ」と推されたこともありますね。運動神経がすごくいいんです。
――オリジナル版のミスボーグを演じたのは藤山律子さん。『愛の戦士レインボーマン』(72~73)で演じていた「死ね死ね団」の悪の秘書オルガに比べ、昔の宇宙人みたいな衣装がキツいなぁ~と子供心に感じてたんですが、井口版のミスボーグは現代風にそれなりにアレンジを加えてありますね。
井口 本当は昔のままのコスチュームも考えたんですが、当時のままだとただのお笑いになってしまう。モジモジくんみたいになってしまうんで、ちょっとだけ現代風にしています。でも、70年代のB級感は残したかったので、あのツノだけは外せませんでした。ツノを付けたままで大マジメに芝居をしてくれる女優をずいぶん探しましたが、なかなか決まらなかった。それで「山崎さんはどうだろう」と直感的に思い付いて、頼んだら、すごくうまく行きましたね。本人はコスチュームを最初に着たときはゲラゲラ笑ってましたけど、でもあのコスチュームが様になるのは彼女の力。すごいと思います。あと、今回、裏テーマがありまして、劇場に親子で観にきた子供たちをドキッとさせたいんです。
――『ルパン三世』の峰不二子っぽく、男の子たちにヰタ・セクスアリス体験をさせようと?
井口 そうです(笑)。ミスボーグがムチ責めに遭うシーンで、子供たちにドキッとして欲しいなぁと。劇場で映画を観る”後ろめたさ”を感じてほしいんです。最近の映画って、なかなかそういう後ろめたさがないなぁと思うんです。ボクが子供の頃に親と一緒に映画を観にいって、突然のキスシーンやヌードシーンに気まずさを感じた体験を、今の子供たちにも味じあわせてあげたいなぁと思うんですよ。映画で感じる気まずさって、とても大切なものが含まれているとボクは考えているんです。
■井口監督の恋愛観、女性観を投影したセリフ
――青年期の大門豊(古原靖久)とミスボーグが禁断の愛に陥り、その後、ミスボーグから「あなたに話さなくちゃいけないことがあるの」と言われるシーンは大人の男もドキッとしますよ。
井口 人生はいろんなことがあるんだよってことを描きたかったんです(笑)。大門って純粋な男。正義のため、父親(竹中直人)の復讐のためだけに生きてきた男。そんな男が、使命以外のことを知ったらどーなるのか。もし、オリジナル版の大門が現代社会に生きていたら、どーなるのか、と考えたんです。多分、組織やら会社に疎まれ、つまはじきになって、うつ病になっちゃうんじゃないかと思うんです。
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