特撮ヒーロー=童貞の概念を破る! 井口監督の集大成『電人ザボーガー』

――『片腕マシンガール』が世界的に大ヒットして、その次の『ロボゲイシャ』も井口監督らしいイマジネーションが炸裂した独創性の高い作品。正直、ここらへんでファン層の拡大を狙った企画に挑む時期かなと思っていたんです。今年、『富江 アンリミテッド』『電人ザボーガー』とリメイクものが続いたのはやや意外でした。

井口 今年はたまたまリメイク作品が2本続いた形になりました。もちろん、『富江』も原作や過去のシリーズが大好きでした。自分の好きな題材を撮らせてもらえて、すごく幸せでした。監督という仕事を選んだ人間の歩む道は、それぞれだと思うんですが、ボクとしては将来的には”人間ドラマ”を撮りたいと考えているんです。特撮も大好きだけど、同じように日本映画も観て育ってきたんです。今回の『ザボーガー』は自分にとっては”通過儀礼”だと思っています。ただの特撮もののリメイクではなく、ひとりの男がさまざまな体験をして人間として成長する姿を描きたかったんです。それに加えて、『ザボーガー』のリメイクには運命的なものを感じていました。生まれて最初にボクが手にしたソフビ人形がザボーガーだったし、自分が映像の仕事を始めるようになってからも、仕事に行き詰まるとピープロの作品のオープニングばかり集めたビデオを栄養ドリンク代わりに観ていました。ピープロ作品に励まされてここまで来たんです。ある意味、今回の『ザボーガー』で自分のキャリアが終わってもいい、くらいの高揚感を感じながら作っていました。

ミスボーグ(山崎真実)男に棄てられた恨みを持って甦った悪のサイボーグ、ミスボーグ(山崎真実)。敵であるはずの大門豊の純粋さに心が動かされることに。

――”通過儀礼”ですか。これまでの井口ワールドの集大成と思っていいんでしょうか?

井口 そうですね。ボクも42歳になり、今年の春に結婚して、家庭を持ちました。40歳まで生きたら、やっぱり20代の頃に思い描いていた夢とは異なる壁にもぶち当たるんです。挫折感も覚えるし、自分の限界も見えてくると思うんです。多分、オリジナル版の『ザボーガー』を観ていた世代は、みんなそうなんじゃないかな。家庭を持った人もいるだろうけど、健康を害した人もいるだろうし、うつ病になった人や、会社をリストラされちゃった人もいると思うんです。そういう人生の節目に立つ人たちを励ますものにしたかった。いわば、SF版『ロッキー』なんです。第2部の熟年編の主人公を演じているのは板尾創路さんなんですが、糖尿病の注射を打ちながら戦うという設定になっています。これはボク自身が撮影中、自分は糖尿病なんじゃないかという不安と闘っていたんです。今春、健康診断を受けたら、糖尿病じゃないことが分かり、ホッとしました(笑)。映画の中の糖尿病の注射シーンは、ギャグじゃなくて、ボクにとっては切実な問題だったんです(苦笑)。

――いつになく、井口監督の話しぶりも熱いですね!

井口 自分にとっては分岐点になる作品だと感じてます。42歳、男の厄年。思うところがやっぱりありますよ。オリジナル版の『ザボーガー』が作られていた時代は、まだ何かを信じることができた。自分の中の正義を信じて、熱くなることができた時代だったと思うんです。今こそ、その熱さをもう一度甦らせるときなんじゃないかなと。奇しくも今年3月に大震災が起き、自分の考えていた”日本人よ、立ち上がれ”というテーマと今の日本社会とがシンクロしたことに驚いているんです。「どうして今、ザボーガーなの?」とよく尋ねられるんですけど、今を生きている人にこそ観てほしいという気持ちで撮り上げた作品なんです。

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