特撮ヒーロー=童貞の概念を破る! 井口監督の集大成『電人ザボーガー』

2013.11.01

海外でも熱狂的なファンを持つ井口昇監督。最新作『電人ザボーガー』は挫折感を抱えた
男たちが、愛する者を守るために再び立ち上がる感動作だ。

【日刊サイゾーより】

 「今回はボクにとって通過儀礼となる作品なんです」。日本が世界に誇る”奇才”井口昇はそう言った。また、責任という言葉を何度か口にした。これまで『クルシメさん』(98)、『片腕マシンガール』(07)、『ロボゲイシャ』(09)などの井口監督ならではの天衣無縫な演出を楽しんできたファンにとっては「おやおや」と驚く言葉ではないか。製作費3億円を投じたことでも話題となった井口監督史上最大のSF大作『電人ザボーガー』がいよいよ公開される。主演の板尾創路をはじめ、キャストも今までの井口作品に比べちょっぴりメジャー寄りの人たちが並ぶ。でも、心配はご無用。これまで以上の過激さに笑えて、でもホロリとさせられ、最後には爽快感が残る快作に仕上がっているのだ。「ザボーガーって何?」という人がうっかり劇場に入っても、すぐさま作品のはらむ異様な熱気に巻き込まれるはずだ。しかし、井口監督の中で何かが変わりつつあるらしい。井口監督への単独インタビューで、その部分にググッと迫ってみた。

――1974~75年にフジテレビ系で放映されたピー・プロダクション製作の特撮ドラマ『電人ザボーガー』の劇場版リメイク。『新世紀エヴァンゲリオン』の大月俊倫プロデューサーからのオファーだそうですね。

井口昇監督(以下、井口) そうです。大月プロデューサーはピープロ作品の権利を全部持っていて、(『古代少女ドグちゃん』を撮っていた)ボクに「リメイクしてみない?」と声を掛けてもらったんです。「えぇっ、ザボーガーをやらせてもらえるんですか?」と驚きながらも即答でOKしました。そのときはどんなふうにリメイクするか全然考えはなかったけど。でも、やっぱりピープロ作品は大好きだったので、やりたかった。他の特撮ものの製作会社とピープロは違った質感があるんです。『快傑ライオン丸』(72)とか『鉄人タイガーセブン』(73)とか、なぜかヒーローが動物顔だったりと特異性があって、子供心に印象に残ってました。『ザボーガー』を見ていたのは幼稚園の頃でしたけど、ロボットがバイクに変形するシーンはすごくインパクトがあったことを覚えていますね。

製作費3億円を投じられた特撮大作『電人ザボーガー』。主人公・大門豊の半生を>第1部青年編、第2部熟年編からなる異例の2部構成で描く。(c)2011「電人ザボーガー」フィルム・パートナーズ (c)ピー・プロダクション

――『ウルトラマン』シリーズの円谷プロに比べ、ピープロ作品は見るからにB級感が漂っているのが幼心にも感じられました。

井口 そうですね。ボク、駄菓子屋の息子なんです。店で『仮面ライダー』とかの特撮ヒーローのブロマイドを売ってたんですが、駄菓子屋の中でもピープロのキャラクターは”駄菓子屋感”が漂ってました(笑)。そのことから、いっそう親近感が湧いたんです。自分が駄菓子屋の息子ということもあり、自分の作品には『猫目小僧』(05)、『片腕マシンガール』『ロボゲイシャ』など駄菓子屋感を注入したくなるんです(笑)。安~いお菓子を食べて育った世代。そーゆー人間だからこそ描けるものって、あるんじゃないかと思うんです。そういう意味でも今回の『ザボーガー』はボクの中ですごくぴったりハマった企画でした。

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