「ファンしか楽しめない」演出がありつつも、出色の出来!劇場版『ペルソナ3』の見所は?

2013.11.25

――毎週、何がしかのアニメ映画が公開されている現代日本。これだけ放映本数が多いと、全部見るのは至難の業……。そんな悩める現代オタクのために、「おたぽる」が送るアニメ映画レビュー! ※本文中に“ネタバレ”はほとんどありません。

■劇場版『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』

劇場版『ペルソナ3』公式サイトより。

【本作のオススメ度】
★★★★☆(原作未プレイの人)
★★★★★(原作プレイ済みの人)

【極私的オススメポイント】
 声優の鳥海浩輔さん(伊織順平役)、ありがとうございます!!「テレッテッテー、順平はレベルアップー」が聞けただけで筆者は満足です!! ゲームプレイ中は、「順平=面倒くさい=回復スキルを持たない使えないキャラ」なんて方程式が筆者の中に出来上がっていたのですが……劇場版では、順平のセリフが面白くてニヤニヤしっぱなしでした。特に、第2の巨大シャドウを襲撃する直前のシーンは秀逸ですね。桐条美鶴と岳羽ゆかりが緊迫した会話を繰り広げているのに、その後ろで美鶴の乗ってきたバイクに夢中な順平。美鶴のセリフにどん被りでしたが、もちろんわざとですよね鳥海さん? また、筆者が一番見逃してほしくないと思うのは、ペルソナ召喚時のキャラクターたちの表情。召喚銃が打ち抜くのは、肉体ではなく“精神”だとハッキリわかる顔をします。ゲームにはない描写で、背筋が凍りつきました。



 ゲーム『ペルソナ3』といえば、独特の世界観を描く深いストーリーと、それを彩るスタイリッシュな映像と音楽が特徴的でした。アトラス(現インデックス)から2006年に発売されたPlayStation 2用ゲームソフトで、ペルソナシリーズの第3作目。初代『ペルソナ』の世界観を引き継いだ『ペルソナ2』とは違う新しい作風が、ファンの関心を強く惹きつけました。

 さて、劇場版『P3』は、果たしてどんなアニメ映画に仕上がっているのでしょうか。筆者も、浮き足立ちながら映画鑑賞に行ってきました!

 先に感想を言わせていただきましょう。

 劇場版『P3』制作スタッフの皆さま、ブリリアント!!(※原作ファンの方は、美鶴風に発音ください。『P3』初見の方は、劇場版で登場する美鶴の言動にご注目ください)

 かなりイイですね、劇場版『P3』。筆者の観に行った回では、鑑賞後に「誰だよ。つまんないとかネットに書いたヤツ」なんて呟く原作ファンもいました。まず、ゲームではポリゴンだった映像が、アニメとしてキレイに生まれ変わっているのがステキです。映像には、『ほしのこえ』や『雲のむこう、約束の場所』を手掛けた新海誠監督作品のような美しさがあります。そして、何よりファンの心をくすぐったであろう演出は、懐かしいゲーム操作画面が随所に出てくること。特に、日付を示すカレンダーの画面では、テンションの上がったファンも多いのではないでしょうか。

 ストーリーは原作通りの展開で、ブレがありません。ゲーム中では見えなかったバックグラウンドが、補足ストーリーとして組み込まれているため、全体の流れがわかりやすくなりました。違和感のあったセリフは改善され、主人公の行動パターンもより自然な動きに変更されています。突っ込みどころは、ほとんどないといっていいでしょう。

 また、ゲーム中では名無し&無言の主人公だった結城理が、無感情な登場からだんだん人間味を帯びていく描写はかなり新鮮です。しかし、ネット上では「主人公がしゃべるのって違和感ない?」という不安を口にする原作ファンも。とはいえ、劇場版でも主人公はほぼ無口ですから、筆者はそれほど違和感を覚えませんでした。

 ただ、残念なことに、映画の前半は“ゲーム中のムービーをつなぎ合わせた”といった感が否めません。前後の脈絡なく「ベルベットルーム」が現れても、原作をプレイしていない人には、おそらく意味がわからないでしょう。また、ファンには嬉しいカレンダーの日送り演出も、アニメの流れを分断されたように感じられそうです。面白い映画だからこそ、「ファンしか楽しめない」という演出がもったいないですね。原作未プレイの人は、ストーリーの予習をしてから観に行くことをおすすめします。

来場者特典グッズには限りがあるので、ご注意を!

 第2弾「early summer」は2014年初夏に公開予定とのこと。それ以外の詳細はまだ公開されていません。ストーリーの進み具合と、副題に四季の名前が入っていることから、おそらく4部作となるだろうというのが、ファンの間では濃厚な見解です。しかし、ゲーム『ペルソナ3フェス』に収録された“後日談”まで入れて、5部作かもしれないとの意見も交わされています。いずれにせよ、長編映画になることは間違いなさそうですね。

 なにはともあれ、ファンにとっては劇場版『P3』の序章として“目覚めの春”にふさわしい作品でした。劇場では、エンディングが流れても席を立たないように注意しましょう。ここを観なかったら、きっと損をした気分になりますよ。また、劇場では先着順に来場者特典グッズが配布されます。数に限りがありますから、「絶対手にいれたい!」という人は劇場に急いでください!
(文/牧野絵美)

■『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』
公開日:11月23日より、全国にて公開中。
公式サイト<http://www.p3m.jp/>

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