「プロレスは八百長」としか思っていない人々よ!プロレスの美学を描く『ロックアップ』を読め!!

2013.11.19

ロックアップ1巻(集英社)

 下火の続いていたプロレス業界だが、最近、新日本プロレスが集客を伸ばしつつあることをはじめ、復興しつつある雰囲気を醸している。その手ごたえを感じさせてくるのが、『TOUGH』シリーズの猿渡哲也が描くマンガ『ロックアップ』(共に集英社)だ。その第1巻が本日、11月19日にリリースされる。

 プロレス業界は近年、さまざまなレスラーや関係者の書籍などで、試合進行の段取りである“ブック”や試合外の対立構図などを取り決めた“アングル”といった、これまでタブーとされてきた舞台裏にまで言及されるようになっている。だからこそ、プロレスとは“どういうものか”まで、一般のファンにまで知られている。そんな“どういうものか”を描いているのが、マンガ『ロックアップ』だ。

 とはいえ、本作の秀逸なところは、プロレス業界の舞台裏を暴露するのではなく、プロレスラーの美学を描いている点だ。

 主人公は、弱小インディープロレス団体の「あかつきプロレス団」を率いるサムソン高木。彼はヘルニアはじめ体中が怪我だらけで、しかもガンに侵されているという満身創痍のプロレスラー。そんな彼をリングに立たせているのは、“プロレスラーは屈強でなければならない”というプライドだ。それが端的に表れているのが、ブリッジもまもとにできない元力士のレスラーのジャーマンスープレックスを「オレがキレイなバンプ(受け身)でカバーしてやる」というシーンだ。

 それ以外にも、団体を守るため、観客に夢と勇気を与えるため、サムソン高木が体一つで激しい戦いに身を投じる場面の数々は、今のプロレスファンだけでなく、かつてプロレスファンだった人の心も揺さぶるほどのエネルギーを持っている。

 プロレスラーの不器用な矜持、強さ、美しさが凝縮された『ロックアップ』は、プロレス、格闘技の枠に収まらない、ヒューマンドラマなのである。

 最後に、プロレスラーの肉体を鮮やかに描く、猿渡哲也の画力のすばらしさも書き添えておきたい。

 プロレスファンの諸兄は、ぜひ一読を。

ロックアップ第1巻
著者:猿渡哲也
出版社:集英社
価格:590円

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