心に愛がなくちゃ！ 今どきバカ正直に愛や友情をうたうアニメ『キルラキル』

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――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー！　これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『キルラキル』
第7話「憎みきれないろくでなし」

『キルラキル』公式HPより。

【今週の極私的見どころ！】
　泣いた。ストーリー的には、本筋からすこし離れて遊んだ回かもしれない。でも、「金よりモノより見栄より、愛、友情でしょう！」みたいなことを、バカ正直にやれるアニメが今どきあったか？　いや、ない！　『キルラキル』は今回それをやっていた。

　満艦飾マコ（CV:洲崎綾）の、「キラキラした生活は絶対わたしが守りぬく！」という言葉に隠された思想。「貧しさから逃れよう、成長しよう」いう尊い意志が、戦いを繰り返す内に、いつの間にか「今の地位や暮らしを守る為には愛も友情も犠牲にしてもかまわない」となってしまい、戦うべき相手もないまま戦いが繰り返され……。

「キラキラじゃなくて、ギラギラにクラクラだったのーっ！」というマコの叫びが響かないなら、そりゃもう熱くない。今回の満艦飾家は、本能字学園で筆頭のエリートになりかけます。でもまたスラムに戻るんだ。なぜなら、その「キラキラは、ギラギラにクラクラ」で、心に愛がなかったから（by「キン肉マンGO! FIGHT!」）。いや、ホントに。

　神回、神回、and 神回。

【今週のオススメ度】
★★★★★

　今回、纏流子（CV:小清水亜美）はマコと共に「喧嘩部」を創設。活動内容は「けんか」。流子がほかの部を道場破りする部です。部長にマコ、戦闘員に流子。結果、喧嘩部は大躍進！　部活動の成果が暮らしに直結する本能寺学園において、満艦飾家はスラムから高層マンション、食事も芋虫コロッケからメンチカツへ。各部屋のエアコン、二段ベッド、オーシャンビュー。それはまさに「キラキラ」の生活。豊かな生活を手にしたマコは「キラキラした生活は絶対わたしが守りぬく！」と心に誓うのでした。

　生徒会中枢にまで喧嘩部の手が届くかという頃、満艦飾家は超高級ペントハウスで食事は連日のフランス料理、庭にはロールスロイス（？）と怒涛のセレブ化！　しかし同時に、満艦飾家から団欒は消え去ってしまいます。パパはキャバクラ、ママはホスクラ、又郎はGADIVA（”GODIVA”？）店買い、ガッツも犬のくせに女連れでドライブの有様。マコもすっかり仕事人間に。

　変わってしまった満艦飾家の様子に、流子は喧嘩部退部を決めます。「今やめたらスラム街に逆戻りよ！　そんなの絶対にいや！」と叫ぶマコに、鬼龍院皐月（CV:柚木涼香）は「今の地位と暮らしを守りたければ、纏と戦い、倒せ！」と二つ星極制服を渡すのです。

　果たして親友との決闘をうながされたマコは？　というと、あっさり極制服を着て流子と戦い始めるんですね。「やっとつかんだ贅沢だもん！もう貧乏には戻れないもん！」と。泣ける。とても泣ける。満艦飾家の面々ときたら「すまん、流子ちゃん、でも今の生活はやめられん！」というエグくクズな始末。

「成功は欲望を生み、欲望は破滅を呼ぶ。だが、一度快楽を知れば、もう抜けられん！　やつらこそ、服を着た豚！」と言う鬼龍院。これも一理ある。理想に挫折したエリートが抱えそうな矛盾。

　親友との戦いを放棄した流子は神衣・鮮血（CV:関俊彦）を解いて総ウケ状態に。そして、マコは流子にトドメをさそうとするのだけど……。

「なんで止めてくれないのよ！　このままじゃ流子ちゃん死んじゃうよ！」

「生活良くなって、家族みんなが輝いてると思ってた！　でもあれは、ギラギラしてただけ、欲に目が眩んでクラクラしてただけ！ キラキラじゃなくて、ギラギラにクラクラだったの！」と、千（by『千と千尋の神隠し』）もびっくりの大粒の涙を流すマコ。

　自分の欲望を乗り越えたマコ。そして満艦飾家はまたスラムへと、団欒の賑やかな食卓へと戻るのでした……。

　今回、ウェブでは結構評価が分かれていました。「満艦飾家の変わり身の早さが許せない」という声や、「マコだけはずっと流子の味方でいてほしかった」という声など。でも筆者は、どんな善良な人間にも（そして、邪悪な人間にも）葛藤があって当たり前だと思います。だから、今回は神回。

　そして今回の騒動を布石に、鬼龍院が発動した指令は「本能字学園　壊散総選挙」!!!　なんだそりゃ。
（文／尾野スミ）