「死者の声を伝える巫女のよう」? 今、『進撃の巨人』短歌が熱い!

 最近、どうやらTwitterや同人誌界隈で「短歌」が密かなブームを巻き起こしているようだ。なかでも、『進撃の巨人』(講談社)について詠んだ“進撃短歌”はかなりの人気を博し、ハッシュタグつきで続々とツイートされたり、名作がpixivでまとめられているほどだ。そんな“進撃短歌”とは、いったいどんなものなのだろう? 実際の作品を挙げながら見ていこう。


1311_shingeki_tanka.jpg短歌ブームをも巻き起こす? 進撃の巨人12巻(講談社)。

 まず、今年の夏コミで販売された短歌集『Soldat』には、作者の綾部ふゆが原作をもとに、104期生+兵長といった主要な登場人物たちのイメージを膨らませて作った短歌が収録されている。主人公のエレンには「我が指を食い千切りたる身熱よ哮(たけ)りて母を友を救えよ」という短歌が作られており、横には「もっと熱くなれ。もっと体を焼け。この指を食い千切るぐらいの熱よ、頼むから、もっともっと、オレを強くしろ。そして、あの時助けられなかった母さんを、みんなを救うんだ」という超意訳が添えられている。さらに、ミカサやアルミン、リヴァイ兵長をイメージした短歌も加えて、「【ガチで詠んでみました】進撃の短歌【綾部ふゆ】」というタイトルの動画まで作り、ニコニコ動画で公開している。その動画も「短歌かっこええ」「短歌ってのがまた味があって良いな…」とコメントが寄せられ、好評のようだ。

 また、先日11月4日に行われた文学系同人誌即売会「文学フリマ」では、少し変わったテイストの進撃短歌本が販売されていた。それが『壁外拾得物 分類番号3102-11-004』だ。これは、“死んだ兵士の手帳”をコンセプトに作られており、ある名もなき人物が兵団に配属されてから兵士として生涯を終えるまでの物語をまとめたもの。『進撃の巨人』のキャラクターに対する二次創作ではなく、『進撃の巨人』の世界観から創作していくという作品だ。本作中には、「足裏を離れ地上で踊るのはもう死んでいる自分の影だ」や「三人は金木犀の輪の中につがうことなき友であれかし」「ここからはだれもどこへもいけませんかみさまかみさまかみさま、おわり」といったように、『進撃の巨人』好きならばどこまでもイメージが膨らみそうな作品が多数収録されている。一つひとつ手作業で作られたこの本は、通販分も含めて即完売。読者からは「“進撃短歌本”の製作者たちが、死者たちの声を伝える巫女のように思えてきた」(@ginyoubi ツイッターより。)といったコメントが寄せられたりするほど。特定のキャラが登場する一般的な二次創作ではないが、『進撃の巨人』ファンにとって凝った作りの中で妄想の余地があるこの作品は、かなり心惹かれるもののようだ。

 ツイッターという限られた文字数で発信する場所が生まれたからこそ、同じく限られた文字数の中で色々な思いを表現する短歌が見直されてきたのだろう。加えて、誰かのツイートからさらに想像を膨らませたり、それに対して返歌を詠むこともできる。今後、同人誌や二次創作の世界では、ますます短歌ジャンルの人気が高まっていくのかもしれない。
(文/田口いなす)

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