ビーイング、エイベックスが”荒らした”? タイアップがアニソンにもたらした功と罪

 そして、95年頃の『新世紀エヴァンゲリオン』ブーム以降、一年間に放送されるアニメの本数が、それまでの50~60本程度から100本前後にまで増加したことで、アニソンの需要も急増。以前にも増して多くの新人アーティストがアニソンを歌うようになるが、その多くはアニメの内容から離れた楽曲であった。

「その流れを変えたのが、00年代以降のエイベックス系アニソンでした。00年代以降のエイベックスは、90年代のタイアップ系アニソンに対する批判から学習したのでしょう。自社レーベルで音楽を受け持った『ヒカルの碁』の主題歌として、作品を彷彿とさせながらも普遍性の高い歌詞を盛り込んだdream(現Dream)の「Get over」を当てたように、アニメの世界観を感じさせる詞とJ-POPとしての音楽性を融合させたタイアップ曲を生み出していき、アニメファンから一定の評価を得るようになりました」(日下氏)

 中には、75万枚以上を売り上げ、01年の『日本レコード大賞』の大賞に輝いた浜崎あゆみの「Dearest」(『犬夜叉』の主題歌)のように、まったくアニメと合わない商業臭の強い楽曲もあったものの、この時期にエイベックスは、アニメファンにも受け入れられるタイアップ系アニソンの方法論を発見したといえるだろう。

 また、別の関係者によれば、02年頃、日本コロムビアでアニメ・特撮系を手がけていたプロデューサーがエイベックスへと移籍したこともあり、同社がアニメ業界とのパイプ作りに努めていたのでは、という話もある。

 日下氏は、「00年代は、エイベックスがJ-POPでありながらアニソンとしても成立する曲を生み出し、後に続くタイアップ曲の道程を切り開いた時代」と語る。冒頭に挙げたB’zも、『名探偵コナン』にマッチした楽曲「Q&A」を提供しているように、この方法論は今も有効に機能している。

 その後00年代後期には、アニメの主戦場が深夜帯へと移ったこともあり、一般層への露出は減少。現在のアニソンの潮流は、購買力の高いオタクファン相手に手堅い売り上げが見込める、出演声優を起用した楽曲へとシフトしているが、こうした状況下で、新たな動きが生まれているとして、アニメ業界関係者は以下のように話す。

「確かに、昔はアニメの製作側と音楽レーベルの力関係によって、アニメの内容に無関係な楽曲がねじ込まれることもあったようです。しかしかつてのタイアップと違い、今はアニメ作品と新進アーティストを一緒に育てるという意識が強くなっています。例えば『化物語』や『ギルティクラウン』などでアニメとの親和性を高め、固定ファンを増やしているsupercell。『魔法少女まどか☆マギカ』などを担当したClariSも当てはまるでしょう。そうやって、音楽不況の今でも売り上げが立つアーティストを作っているのです」

 これまで見てきたように、アニソンはタイアップ楽曲が牽引してきたジャンルといえる。タイアップを通じて、アーティストとアニメは歩み寄っていった。こうしたメソッドを踏襲し、再びみなが口ずさむアニソンが生まれる日も、そう遠くないかもしれない。
(文/有田 俊)

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