「聖地巡礼」の元祖作品『究極超人あ~る』から見える成功のコツ

2013.10.29

 全国各地で開催される聖地巡礼ビジネス。そもそも「聖地巡礼」の元祖がどこであるかを知る人は少ない。

EMOTION the Best 究極超人あ~る(バンダイビジュアル)

 聖地巡礼の元祖とされる場所は、長野県は飯島町にあるJR飯田線の田切駅と、伊那市にある同じく飯田線の伊那市駅前。ゆうきまさみ原作の『究極超人あ~る』OVA版に登場したのを契機に、多くのファンが訪れたというのが、聖地巡礼の始まりである。OVA版が発売されたのは1991年。にも関わらず、現在も訪れるファンがいるというから驚きだ。今は商売を止めてしまったが、元は酒屋だった田切駅近くの通称「元・下村商店」には、今も駅ノートとスタンプが保存されており、けっこうな数のファンが訪れるという。
 
 かれこれ20年あまり、細く長くアニメの聖地として続いてきたこの土地は、昨年から再び、盛り上がりを見せている。

 きっかけは昨年、伊那市駅開業百周年を記念して開催された『究極超人あ~る』OVA再現イベントだ。一回限りとアナウンスされていたハズのイベントが、今年も、去る7月26日に再び開催された。

 イベントの主旨は、OVAのクライマックスである、自転車10人乗りで1時間以内に、飯田線の田切駅から伊那市駅を目指すシーンを再現するというもの。昨年、全国各地から集まった参加者と、主催者をはじめとする地元有志の熱意により、今年も出たトコ勝負な開催が決まったというわけである。
 
 このイベントのキモは、なによりも作品世界さながらのユルさにある。なにしろ、参加者は自転車を持参で午後4時に田切駅に集合。午後5時に出発した後、ゴールの「西園寺ツーリスト伊那支店」に午後6時までに到着しなかったら、特に探しもしないのでご随意に、という具合である。

 予算はないので、凝ったことはできない。ならば、作品のスタイルに合わせてやればよい。これがうまく現実と作品世界とをリンクさせ、普段は人の姿も少ない田舎町(失礼)に100名余りが集まることに。まさに、少ない予算で成功を収めた典型例である。

 このイベントの仰天っぷりを、まずはルポ形式で綴っていこう。

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