トップ > アニメ > 話題・騒動 > 記事詳細  >  > 2ページ目

クラウドファンディングでアニメ業界も変わる?アニメ監督・森本晃司を直撃!【後編】

2013.10.28

■クリエイティブスペースphyΦ設立の意味

(撮影/後藤秀二)

──森本さんは2011年にクリエイティブスペース『phyΦ』を立ち上げられました。最近は、アニメスタジオの独立も相次いでいて、GAINAXからTRIGGER(代表作:『キルラキル』)であったり、MAD HOUSEからMAPPA(代表作:『坂道のアポロン』)、カラーからスタジオコロリド(代表作:『寫眞館/陽なたのアオシグレ』)といった例がある。アニメ業界全体が大きく動いているようにも感じるのですが、どう感じていますか?

森本 そうですね……『phyΦ』は、アニメだけじゃなくて、いろんなアーティストが集まる場所って位置づけています。その中に、マンガ家やミュージシャンがいてもいいから、みんなが集まって「あ、やってるね」とか「忙しそうだな」とかが見えると、こっちも頑張れるから(笑)。タイミングが合えば、「このアイデアいいね。一緒にやろうか」みたいなこともできる。だから、会社じゃなくて、刺激し合える人たちが集まる場所が欲しくて『phyΦ』を作ったんです。  正直な所、会社の形にすると、会社を維持するためにやりたくないこともやらなきゃならない。それで、いつの間にか「あれ? こんなはずじゃなかったのに」って思うこともある。だったら、集まる時に集まって、面白い事して、終わったら解散、みたいなのが一番いいかなと思ったんですね。

──それは創設メンバーであったSTUDIO4℃(森本氏は2011年に退社)でのことですか?

森本 うーん、まあそうだね。STUDIO4℃は代表取締役の田中栄子さんが、がんばって大きくしてくれたんだけど、大きくなるほど「俺とは違うな」って気がしてさ。もっと小さくて、精鋭がやってて、会社のみんなが一緒にひとつの作品に取り組んで、終わったらみんなで「打ち上げだー! 飲むぞー!」って頃が好きだったんです。でも、会社が大きくなって、同時に3本、4本と作品を抱えると、それぞれがコソコソと小さくバンザイみたいになる(笑)。「せっかく会社にみんないるのにな」っていう気がしたんですね。

──演劇はまさにそういったものですね。そうすると、森本さんはアニメから離れてしまうのではないか、という心配もしてしまうんですが……。

森本 いや、それは全然ないよ。これは一貫しているんだけど、アニメでも演劇でも、自分の中に序列があるわけじゃない。その見世物にアニメーションが合うならアニメだし、人を映すなら実写、ナマモノなら演劇ってだけで、やることは一切変わらないんです。所詮、見世物だし作り物。嘘の世界ですよね。いかに「いい作り物」として魅せられるか、ってことなんです。だからね、「お客さんも騙されちゃだめですよ」って思うんですよ。

──「作り物に騙されないで」と言いながら、騙しちゃうんですね(笑)。

森本 言い方は悪いかもしれないけどね(笑)。例えば、今のゲームはすごい技術できれいに作っているけど、それが想像したものを超えないから、がっかりしちゃう。昔の『ファイナルファンタジー』とかに出てくるゲームの森なんか、ドット絵でほんとにマンガみたいじゃない。でも、自分の想像力で補完して、その森が、ものすごく恐い森に見えるわけだよね(笑)。だけど、どんどん映像技術が上がると、「こんな森ですよ」っていうのをいちいち見せてくるでしょ。それが想像してた森と全然違うと、「え、こんなしょぼい森だったの?」とか思っちゃうんですよ。

 そこで想像を超えたものを見せられたら「おお、すげえ!」ってなるじゃない。作り物を見せるなら、最低限そこまでやってほしい。想像力を超えられないのに、想像力を奪わないでほしい。だから、観る人には「騙されないで!」って思うんです。  そういうところで言うと、演劇はお客さんに頼るところがすごく大きい。お客さんの想像力に頼るというか。

──『羊人間012』はクラウドファンディングを通じて、観客も含めた共犯関係で演劇空間そのものを創っていく。それこそが、森本さんと保坂さんが結成した「イタズラ同盟」だと。

森本 そうそう。だから、ウチらは場所を提供するので、「みんな、イタズラに加担してよ!」という感じです。土管が置いてある空き地はゲットしたからって(笑)。

――『ドラえもん』ですね(笑)。“何が起こるのかわからない遊び場”で何が起こるのか? 12月の公演を楽しみにしています! (構成/尾野スミ)

森本晃司(もりもと・こうじ)
phy主宰。代表作に『アニマトリックス』『次元爆弾』など。2011年にフランスの広告「Attraction/魅力」でカンヌ・インターナショナル・クリエィティビィティ・フェスティバルにてサイバー部門銀賞を受賞。2013年にLEXUS社と「THE WEINSTEIN COMPNY」によって製作された「LEXUS SHORT FILMS」中の「A Better Tomorrow」アニメーション・パートを監督。この作品は2013年第66回カンヌ国際映画祭のワールドプレミアでリリースされた。同年7月、劇場作品『SHORT PEACE』のオープニングアニメーションを監督。

【公演情報】
『羊人間012』 アニメーション監督・森本晃司と劇団ムシラセ主宰の保坂萌が手がける新感覚演劇。
 ひとりの人間から、あるとき分裂した11人の「分裂人間」たち。姿形も違えば、歩んできた人生もまるで違う。あるひとりの分裂人間が発した言葉が、彼らの世界を激変させる。「もし分裂した自分たちを一人に絞るなら、誰を残す?」――。

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング