クラウドファンディングにも挑んだ舞台『羊人間012』とは?アニメ監督・森本晃司を直撃!【前編】

2013.10.27

自身初の演劇『羊人間012』に挑む森本晃司氏。(撮影/後藤秀二)

『MEMORIES EPISODE1 -彼女の思い出-』や『アニマトリックス』、『Genius Party Beyond』といったアニメ作品をはじめ、KEN ISHIの『EXTRA』といったMV、今年はカンヌ映画祭でリリースされた『LEXUS SHORT FILM -A Better Tomorrow』のアニメーション・パート監督など、マルチに活躍するアニメーション作家・ビジュアルクリエイター森本晃司。その作品の中で、不思議な空間を創り続けてきた彼が新たに手がけるのは「演劇空間」だった!

 森本氏の新作は、監督・演出から映像・イメージデザインまでを手がけた演劇『羊人間012』。森本氏率いるクリエイター集団「phyΦ」と気鋭の劇団「ムシラセ」のコラボレーションによって、来る12月7日から12月16日、新宿「サンモールスタジオ」にて公演予定だ。特に今回の『羊人間012』では、現在クラウドファンディングの『CAMPFIRE』を使い資金を集める参照など、その新たな試みが注目を集めている。

 そこで、「おたぽる」ではそんな森本晃司その人を直撃。話は『羊人間012』だけにとどまらず、現在の日本のアニメ業界が孕む問題まで、赤裸々に語ってもらった。

──大御所アニメ監督の森本さんが演劇をやると聞いてびっくりしました!

森本 もともと演劇には興味があって、昔で言うと劇作家の寺山修司とか安部公房が好きでしたね。(アニメと違って)演劇は、ナマモノでリアルタイムに変化していくから、そういうのも面白いな、と。アニメでも演劇でも、基本は(観客を)「驚かせたい」というのは同じです。劇場の席に座って、スクリーンを見て、一番最初のワンカット目に何を観せよう? とか、日常に戻った時に視る景色が変わっていてほしいな、というところは変わりませんから。

──確かに観終わった後、世界を見る目が変わる作品というのがありますね。

森本 そう、それが一番やりたいんだよね。「1+1がもしかしたら3かもしれないよ」っていうのを提示するのが自分の仕事だと思っていて、その時間の中ではその嘘に説得されて、それから出て行ってもらいたい。

 さっきも言ったけど、私は寺山修司が好きで、彼はすごい発明家なんですね。観客が安全な場所から舞台を観るのが普通の演劇だけど、寺山さんの舞台は観客を巻き込んで、急に安全ではなくなってしまう。そんな寺山さんの舞台は本当に楽しそうだな、と思っていました。私自身がDJをやっているように、「人を巻き込む」というのがすごく好きなんです。演劇は観る側が受身なだけじゃつまらない。観客も一緒に参加して、みんなで盛り上げてほしい。この舞台も、ふらっとあるSFチックなバーに来て「今日はここでなにやるの?」「今日は演劇やるらしいよ」「じゃあちょっと見てから帰ろうか」みたいな気軽な気分で観てほしいんです。

──演劇であれば、観客を巻き込んだ作品が作れるということですね。

森本 今回やっているクラウドファンディングも同じ趣旨です。普通は公開まで作品の情報はあまり出てこないけど、それが面白くないなと思ってて。作っている途中の情報をある程度公開することで興味持つ人が出てきて、「お、面白くなりそうだから参加しよう」と思ってくれれば、でき上がったものを観るだけじゃなく、制作過程に参加して楽しんでもらうこともできますよね。そういう参加の形を作れるのがクラウドファンディングだと思って。

 今回はUstreamでの配信も予定しているけど、ただ舞台の様子を流すだけじゃつまらないから、カメラを複数使ったり、舞台とはまた違う『羊人間012』を作りたい。それにもコストはかかるけど、「面白そう」「観たいな」と思ってくれる人がいれば、作るところから協力をしていただきたいです。

──どうしても、演劇にはちょっとハードルが高いなというところがありますけど、今回のクラウドファンディングでは500円の参加で、Ustream配信を観る権利をもらえますよね。それなら気軽に観れるし、それがきっかけとなって実際に舞台を観に行こうかと思うかもしれません。

森本 たしかに演劇にはハードルが高い部分があって、それは仕方ないかもしれない。でも、500円だけでもファンディングしてくれれば、Ustreamでリアルタイムに観られるし、もっと軽い気分で、この『羊人間012』の目撃者になってほしい。

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