初音ミクの画像は勝手に使ってよい? 『初音ミク』の販売元のクリプトン社に聞く

初音ミク」の父方の兄弟の娘であるオリジナルのキャラクター「初芽ミロ」というキャラクターを、「初音ミク」といっしょに記載したAさんのマンガがあったとします。

 このAさんのマンガを利用して、さらにあなたが、その従兄弟のアパートの隣の住人である第3番目のキャラクター「初出ミレバ」を「初芽ミロ」と「初音ミク」の3人で登場させたマンガを創作したとします。

 整理します。

(1)一次著作物:「初音ミク」(権利者はクリプトン社)
(2)二次著作物:「初音ミク」+「初芽ミロ」(←Aさんが創作したマンガ)
(3)三次著作物:「初音ミク」+「初芽ミロ」+「初出ミレバ」(←あなたがつくったマンガ)

 あなたは、PCLに基づき「初音ミク」の利用に関しては、クリプトン社への許諾申し入れの電話は不要となりますが、Aさんへの「初芽ミロ」の利用に関しては、許諾申し入れの電話やメールでの交渉は必須となるはずです。私は、目を皿のようにしてPCLの条文を読み込んだのですが、この問題に言及している条文を見つけられませんでした。

●クリプトン社に泣きつく私


「どうしても、PCLから『初音ミク』のN次創作が安心して自由に創成される世界が導き出せないのです」と、泣きを入れた私に、クリプトン社は、親切に答えてくれました。

「N次創作は、『ピアプロ』が担保しているのです」

–え? 「ピアプロ」って、「ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)」のことではないのですか?

「違います。『ピアプロ』とは、弊社が開発したコンテンツ投稿サイトのことです」

 もう、この辺から、私の混乱の度は、最大級に達するのですが、ここから先の、私の理解へのプロセスと、クリプトン社のライセンス戦略、そして、「同人誌’」問題を含む二次的著作物の問題解決への提案は、次回、「初音ミクと著作権」シリーズ最終回で、ご説明したいと思います。
(文=江端智一)

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。

【註1】漫画キャラクターの著作権保護(3) キャラクター権の確立への模索

【付録:クリプトン社に提出した江端の質問と、そのご回答】

※今回のコラムに関係のある部分のみ抜粋。

Q1:PCLの設立された背景を、ご教示いただけますでしょうか?

弊社は2007年8月に音声合成ソフトウェア『初音ミク』を発売いたしました。この商品は「歌声を合成するソフトウェア」であり、商品の訴求のために、その歌声の持ち主として少女のキャラクターを設定いたしました。
当時は、インターネットの動画投稿サイトに大きな注目が集まりはじめたタイミングでした。『初音ミク』のユーザーさまも、キャラクターの画像を背景とした動画の形式で、動画投稿サイトで楽曲を発表される方が多くいらっしゃいました。
「歌声を合成するソフトウェア」とそのキャラクターという組み合わせは、幸いにも弊社製品のユーザーさまを超えて多くの方におもしろく感じていただけるようになりました。
そうなりますと、今度はさまざまな分野のクリエイターの方が、『初音ミク』を通じた創作に参加されるようになりました。
例えば、『初音ミク』のさまざまなイラストが新たに描かれ、インターネット上で発表されるようになりました。それが、ある『初音ミク』の歌の光景を描いたものであったとすると、次にその歌とイラストをセットにした動画が投稿されました。

逆に、全く独自に描かれた『初音ミク』のイラストを、自分の制作した歌に合うものだと感じて、そのイラストを使用して動画を制作される方もおられました。このようなかたちで、音楽の制作者とイラストレーターが、インターネットを介して「動画の制作」という共同作業を始められるようになりました。
この流れは、イラストレーターの中にとどまるものではありませんでした。ひとつの動画に複数の画像を用いて、あたかもPVのような動画の編集をされる方もいれば、3DCGのキャラクターモデルを制作し、それを用いて『初音ミク』が動き、踊るような動画を制作される方もおりました。

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