初音ミクの画像は勝手に使ってよい? 『初音ミク』の販売元のクリプトン社に聞く

●そもそも、ピアプロ・キャラクター・ライセンス(PCL)とは何か?


 一言で言うと、「あなたは、『初音ミク』の絵の権利を有するクリプトン社へ許諾の申し入れをすることなく、自由に使っていい」というライセンスのことです。ただし、巨大な2つの制約があって、「非営利目的であること」「公序良俗に反しないこと」が絶対の条件です。

(1)運動会で、「『初音ミク』の絵」をベースとして自分で描いた絵や、自分でつくった「初音ミク」人形などを作成して、自由に使っていい。学校の文化祭で、校門の前に、「初音ミク」を描いた巨大な看板をつくって公開しても、クリプトン社の許諾をお願いする電話やメールは「省略」できます。(ちなみに、あまり知られていませんが、アニメのキャラクターを運動会や文化祭のイベントで著作権者に無断で使う行為は、立派な著作権侵害です)

(2)お金を儲ける目的でなければ、自分のホームページのトップに、「『初音ミク』の絵」をベースとして自分で描いた絵を掲載してもいい。「『初音ミク』が登場する小説」も「『初音ミク』が登場する同人誌」も無料配布ならOKです。

(3)しかし、「初音ミク」の「薄い本」は絶対ダメ。PCL第3条2項5号違反であるとして、「初音ミク」の権利者であるクリプトン社があなたに警告し、必要なら提訴することもありえます。

 クリプトン社さんからいただいたご回答によれば、PCLの法律的な考え方は、以下の通りとなります。

(1)著作権法から離れた(著作権法を無視した)私的ライセンスではない。
(2)あくまでも著作権に基づくものであって、クリプトン社が製品パッケージに描いたキャラクターの原画像に関する、不特定多数の方への利用許諾となる。
(3)最も厳密な意味においては、著作権法27条と28条の実施権許諾となる。

 また、PCLは、「キャラクターライセンス」といわれていますが、別段「キャラクター権」という新しい権利の創成をうたっているものではないということです。

 ところで、私はこの「キャラクター権」という言葉から、当初「『初音ミク』の(仮想)人格的権利」というようなものをイメージしていました。つまり、通常の人格権の概念を導入して「『初音ミク』の幸福追求権」に基づく、「原告『初音ミク』」による、「『初音ミク』の『薄い本』の差止請求訴訟」とかのイメージを持っていたのですが、完全な勘違いでした。ちなみに、「キャラクター権」について興味のある方は、牛木理一先生の論文【註1】が大変参考になると思いますので、ご一読ください。

 このPCLによって、私が上記に掲げた問題が解決されるだけでなく、メリットまで発生することになります。

(1)創作者は、非営利目的で、公序良俗に反しない限り、いくらでも安心して「初音ミク」を利用した著作物を創成し、発表することができる。
→「初音ミク」を安心して利用できることへの貢献

(2)クリプトン社は、上記(1)に基づくライセンス許諾をいちいち判断する必要がなくなるばかりか、本来であれば莫大な費用のかかる宣伝広告活動を、創作者がやってくれることになる。
→「初音ミク」のブランド化への貢献

(3)さらに、クリプトン社は、このような「初音ミク」ブランドの効果として、営利目的の「初音ミク」の利用に関して、別途の契約を受けて、利益を上げることができる。例えばコンビニのイメージキャラクターとか、お菓子のパッケージへの利用などが、これに該当します。
→「初音ミク」商品化権による利益の回収

 このように、「初音ミク」に関しては、PCLによって、「著作権という権利によって、不幸になる人間がいない」ように見える、ちょっと信じられない状態が達成されるわけです。

● それでもN次創作の問題は解決されない


 しかし、ある時「あれ?」と気がつきました。確かに、このPCLは「初音ミク」を「直接的に利用する」という場合については、問題を解決します。しかし、その二次的に利用された著作物を、さらに利用する「三次的に利用する著作物」の問題については解決できていません。

 例題を使って説明します。

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