現役ゲーム会社社員が本音でレビュー! SCEの雰囲気ゲー『rain』

2013.10.15

――メーカーに気を使った評価なんてもういらない! 巷にあふれるゲームの中で、本当に遊ぶ価値のあるゲームは何なのか? ”現役ゲーム会社社員”が、いちユーザーの視点から、同業者としての視点から、話題のゲームをプレイして評価を下す! ゲーム業界の内情までわかる、禁断のゲームレビュー!!

『rain』の公式HPより。

 ソニー・コンピューターエンターテイメント(以下、SCE)から10月4日に発売された、PS3専用ダウンロードゲーム『rain』。名作『ICO』や『ワンダと巨像』を作ってきたSCEが得意とする、いわゆるゲームの世界観を楽しむ「雰囲気ゲー」である。

 SCEJは開発が長期化している『人喰いの大鷲トリコ』が控えているため、スタッフ的にも人数を大きく割くわけにもいかないはずで、社内に余裕があるわけではないと思う。しかし果敢にも今回、王道RPGなどとは違って「大ヒット」が見込みづらいベタベタの「雰囲気ゲー」を発表してきたので、さっそくプレイしてみることにした。

『rain』の内容は非常にシンプルだ。主人公は、雨が降り続ける夜の街に迷い込んでしまった透明な姿の「少年」。少年は、彼と同じように透明な姿をした少女と出会い、2人で協力しながら街の出口を探す。ゲーム部分については、少年を操作して街に配置してあるオブジェを動かし、追ってくる敵の妨害をしながら前に進んでいくアクションアドベンチャーゲームとなっている。

 はじめに抱いた感想としては、たった1500円のダウンロード専用ゲームで、よくここまで背景を作りこんだものだ……ということだ。このグラフィックス・クオリティのゲームを作ろうとすると、当然開発年数も、開発費もかさむ。某ゲーム会社大手であるウチの場合、「売れ線」を狙った企画でない限り、まずそんな開発費は降りてこないだろう。その点、「雰囲気ゲー」に開発費を割くという寛容さは、さすがSCEといったところだ。

 とはいえ『rain』は、あくまでもダウンロード専用ゲームの開発規模に収まっているといえる。chapter8までというステージの短さは想定内だが、「ゲーム体験」が非常にチープになってしまっているのが残念だ。

「雨が降っている時は姿が見え、雨が降っていない場所では姿が見えない」という、“かくれんぼ”のような基本システムの中ですべての“遊び”が完結しており、悪く言えば想定通りの“遊び”しかすることができない。使えるギミックもプレイヤーが行えるアクション数も、数えるほどしかない。敵はたったの5種類だ。同様のサイズ感の別ゲームと比較してみると、どうしてもその「ゲーム体験」が見劣りしてしまう。同じダウンロード専用ゲームでも、ユーザーを驚かせる数々のギミックと、それにマッチした世界観で人々を魅了した『LIMBO』(その後、パッケージ版も発売)や、圧倒的なグラフィックスの美しさと爽快感で、新たな「ゲーム体験」を生み出した『風ノ旅ビト』のような、つべこべ言わずにこのゲームはやっとけ!……と同業者に勧めたくなるようなゲームにはなっていないのである。

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