Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第1回

チビでブサイクな小学生の僕に勇気を与えてくれた『さすがの猿飛』の完成度

――今から20~30年前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

Rum_01.jpeg(c)村田らむ

『さすがの猿飛』は「増刊少年サンデー」で1980~84年まで連載していた、細野不二彦の極初期の作品である。氏の作品は『ギャラリーフェイク』『ダブルフェイス』などシリアス路線が多いが、初期は『さすがの猿飛』をはじめ『どっきりドクター』『Gu-Guガンモ』(すべて小学館)とコメディ作品が多かった。

「舞台は私立忍ノ者高校。毎年300人の忍者を世に送り出す、忍者養成機関だ。主人公は、その高校に転校してきた猿飛肉丸。学校創設者の孫という触れ込みだが、忍者らしからぬコロコロと太った体型でかつスケベ。しかし忍者としては超一流で教師よりも腕が立つ。そしてなぜか幼なじみのかわい子ちゃん霧賀魔子ちゃんとは相思相愛の恋人同士なのだ!!」

 ……という設定である。

 忍者モノは『カムイ伝』(青林堂)『落第忍者乱太郎』(朝日学生新聞社)『NARUTO -ナルト-』(集英社)と古今枚挙にいとまがないほどの人気ジャンル。さえない男と美少女のカップルというのも『Theかぼちゃワイン』(講談社)『うる星やつら』(小学館)とこちらも人気のパターンである。

 鉄板な設定とも言えるが、ありがちとも言える。ただ、細野不二彦の画力はありがちではなかった。まだ20歳そこそこだったはずだが、今見ても、すでに老成していると言っていいほど、完成度の高い作画だ。

 アクションシーンはもちろんのこと、女の子たちがとても可愛く描かれ、お色気シーンは当時の小学生の股間を熱くした。

 当時小学生だった僕は、やっぱり股間を熱くしていたが、作品を知ったのはマンガではなくアニメだった。

 オープニングの「恋の呪文はスキトキメキトキス」は今でもカバー曲が発売されるくらい有名だが、エンディング(後期)の「忍豚レゲエ」もうちのクラスでは大いに流行った。体育の時間に男子が、クラスの太った女子に向けて、

「いっとん にとん さんとん デブ!!」

 と大声で歌って泣かせたりしていた。それももう30年前のできごとか……おそろしい。

 カッコ悪い主人公がカッコ良く活躍するという物語は、チビでブサイクな小学生の僕にとって勇気を与えてくれる存在だった。

 肉丸はチビでデブだけど、とても明るく人なつっこい。変にいじけたり、ひねたりしない。見ていて、とても気持ちがいいキャラだ。「神風の術」で女の子のスカートをまくったりするものの、根っこの部分ではとても優しい。一途に恋人を愛しているし、いざ彼女がピンチになると、容赦なく怒り、全力で戦う。見た目とはうらはらに、ストレートにヒーローなのだ。

 普段はコメディなので、あまりヒロイックな展開にはならないが、たまにシリアスな話がある。

 コメディマンガの中で、まれに描かれるシリアスな展開というのは、実に胸アツでワクワクする。コミックバンドがたまに歌う“マジな歌”みたいな感じだろうか? 爆風スランプの「ランナー」とか米米CLUBの「浪漫飛行」とかか……ちがうか。

 最終巻は、まさにどシリアスな展開になる。忍術VS幻術の戦いで忍ノ者高校は壊滅。最強にして最愛の敵の前に、肉丸はかなりの窮地に立たされる。

 最終決戦は、久しぶりに読んでも、鳥肌が立った。肉丸と一緒に青春を送った中年たちも、まだ生まれていなかったという若者たちにも、ぜひ読んでもらいたい一作である。

村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。現在は、太田出版のWEB連載サイト「ぽこぽこ」にて、マンガ家の北上諭志と共に『デビル・ダンディ・ドッグス』を連載中。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/
●『デビル・ダンディ・ドッグス』連載ページ<http://www.poco2.jp/comic/dddogs/

『さすがの猿飛』(1)

『さすがの猿飛』(1)

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