実家破産にお笑い芸人…『パズドラ』ガンホー社長の半生と”ヒットの方程式”

実家破産にお笑い芸人…『パズドラ』ガンホー社長の半生とヒットの方程式の画像1TGSに登場した森下一喜氏(写真右)。写真左は、日経BPヒット総合研究所研究員の品田英雄氏。

 スマホやタブレットPCで楽しめる人気ゲーム『パズル&ドラゴンズ』(以下、『パズドラ』)で、株価を上げて一躍注目を集めたガンホー・オンライン・エンターテイメント。これまで『ラグナロクオンライン』以外に、爆発的な人気を得るタイトルを持てず「低迷している」というイメージの強かった同社は、『パズドラ』一作で一気に業績を回復したのである。そんなガンホーを率いる代表取締役社長の森下一喜氏が、9月19日に東京ゲームショウ2013初日の基調講演第二部に登場した。基調講演とはなっているものの「講演は苦手なので3度も断った」という森下氏。そこで日経BPヒット総合研究所研究員の品田英雄氏を相手に、対談という形で「講演」は進行した。

 まず品田氏が投げかけた質問は、1900万ダウンロードを突破した『パズドラ』がヒットした理由である。これまで、幾度かの講演で「方程式はない」と繰り返し発言している森下氏は、ここでも「ヒットの方程式はやっぱない」と回答した。

「みんな聞いてくるのですが、僕自身は分析をしようとしていません。どちらかというと、失敗の分析のほうが大切。成功は、タイミングとか運です。時代時代によって変わってくるユーザーも進化しているのだから、方程式を使っていたら、ついていけません」(森下氏)

 そうした中で、「成功の理由があるとすれば……」として挙げたのが、最初は横向きのゲーム画面だったものを縦に変えさせたことだという。またドロップ【編注:『パズドラ』のパズルの構成要素】が、どちらにでも動くようにして属性を加えたことも、つけくわえる。なぜ、森下氏は成功の方程式の存在を否定するのか。その理由と思われるのが、次の発言だ。

「『パスドラ』というフォーマットは早く壊していかなくてはいけないと考えています。『バズドラ』のヒットまで、『ラグナロクオンライン』を越えるゲームをつくることは、できませんでした。成功体験のフォーマットを持っていると、変わることはできないんです」(同)

 成功体験を重視せず、常に新しいことを考える。そのために、同社の環境はちょっと変わっている。会場では、森下氏自らが撮影した社内の映像が流れたが、文字通り和気藹々である。また、会社をあげてサンバカーニバルへの参加に取り組んでいるというのも、注目すべきポイントだろう。

「会社が100人を越えて、一体感がなくなったので、どうしようかと考えたんです。そこで、お祭りが好きなので、阿波踊りか、よさこいソーランかサンバのうちどれかに参加するといいんじゃないかと。それで、事務局に電話したら、サンバがけっこう自由に踊ってよいとのことで、浅草サンバカーニバルに出ることになりました」(同)

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 会社の業績が右肩上がりなことからも、この試みは成功しているといってよい。しかし、講演中に「今は、大金持ちなわけですが……」と品川氏に投げかけられた、森下氏の言葉は衝撃的だった。

「あくまでバーチャルですから」(同)

 この言葉に続けて、森下氏は次のように語った。

「お金がそんなにあるわけではなく、今でもUR(都市機構)に住んでいます。車もあんまり興味がないんです」(同)
 
 ここからしばらく続いたのは、森下氏の人生の話。「寿司屋というのは、店が迎えに来るもの」と思っていたほどの大金持ちだった実家が、高校生の時に破産。その後「モテるのではないか」と芸人を目指すもコンビは解散。そして、内装工をやっていた時に「スーツを着ていたらモテるのではないか」と考えて、ソフトウェア会社に入った末に今に至るのだという。

 こうした人生を聞くと森下氏の「あくまでバーチャルですから」という言葉は株価が上昇し、業績が右肩上がりの状況なんて、長くは続かないという意味だと見て取れる。ゆえに、森下氏は常に過去の成功体験に囚われるのではなく、新しいものを開発することを止めないのだ。

「幸せなのは、ゲームをつくることしか考えなくてよいこと」とも語った森下氏。まだまだ成長を続ける『パズドラ』だが、その勢いもいずれは止まる。その前に、どのような次の手を打ってくるかが興味深いところだ。

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