世界初! 客席にダイブするヘヴィメタルアイドル“アリス十番”インタビュー

過酷なアイドルビジネスは初期費用1000万!アリス十番に見る新しいアイドル経営

――CDやライヴを黒字化させる金額の目安はどの程度なんでしょう?

せいじ CDは制作費によって大きく変わるので3千枚売って黒字の場合もありますし、1万枚でも赤字ということもあります。社員とタレントが食べていけるだけCDを売るのはなかなか難しいですね。

 ライヴの場合は、400人程度の箱の場合、チケット代が3000円として、諸経費と彼女たちのギャラも含めて考えれば300人の動員で最低限の黒字となります。でも300人動員するのは簡単ではないんですよ。だから通常、イベントは昼と夜の二部制で行います。そうすると、単純計算で一部に150名程入ればチケット代だけで黒字にできますね。実際、いまの彼女たちの動員力は最大で350~400人くらいです。

――ライブの売り上げが生命線なんですね。でもその一方で、先日たった1人のためのライヴを開催されたらしいのですが、これって今の話を聞くと大赤字だったんじゃないですか?

 

せいじ そのライヴはちょうどヤフーオークションでスキル出品というカテゴリが新設されたときで、ページをのぞいてみると誰も出品していなかったんですよ。だったら最初にやってやろうと。落札価格は22万円だったので箱代や経費を考えると当然大赤字です。でもライヴは30分きっちりやったし、特殊効果もいつも通り。スタッフもフル稼働。手抜きは一切なしでした。

 なんでそこまでしたかっていうと、1人に対してだろうが、100人に対してであろうが全力を尽くすということを彼女たちに学んでほしかったんです。たった1人であっても熱いパフォーマンスをすれば、思いがファンの中に広がっていくし、メディアからも注目される。最終的に良い結果が返ってくるんです。

本番前の立花あんなちゃん、森カノンちゃん

変身してもどこかかわいいです

――お二人はどう感じたのですか?

カノン ファンの方の反応がすごく分かるので心が温まりましたね。

あんな その方が涙を流してくれて喜んでくれて、これがエンターテイメントなんだなって思いました。

――アリス十番は9人もいますが、メンバーが大人数と少人数とでは、運営の差ってあるんですか?

せいじ 多い人数の方が単純に1人辺りにファンがつくことで動員が増え、集客力が上がりますね。集客力があるということは、質の高い音楽イベントにたくさん出られます。このイベントに出られるというところがライブアイドルにとっては何より大切なんです。

ただ、デメリットもあります。衣装代など制作費が高くついたり、テレビの仕事が入った場合は出られる人数が限られてくるのでメンバー間で選ばれるタレント、選ばれないタレントが出てきます。今回だってこの取材に呼ばれたのは2人だけですよね。選ばれないメンバーはそれだけで多大なチャンスを逃してしまうので厳しさを目の当たりにすることになります。そうすることによってメンバー同士切磋琢磨し、お互いを向上し合います。

 少人数の場合制作費などは安くなりますがタレント力と集客力があるメンバーを揃えないと良いイベントに呼ばれません。なのでそれだけでチャンスを逃すことになります。

――今後もいまのスタイルを続けるのですか?

せいじ 戦略としては少々乱暴であってもこのスタイルでいきますよ。ダイブもしていきます。ヤフオクにいたってはアイドルを売るという行為なので人によっては人身売買と取られてしまうかもしれない。だけど何があっても彼女たちの命懸けのパフォーマンスを見てもらえれば納得していただける自信があるし、それだけのポテンシャルがあります。

 アーティストっていうのはある意味人の命を預かる仕事だと思うんですよ。彼女たちのツイッターでの一言が、楽曲が、歌声が、ライヴ中の表情が、全ての行動が見ている人の人生に大きな影響を与えるんです。もしかしたら思い悩んだ人の自殺すら止められるかもしれない。それだけ影響力を持つものなんです。そこを彼女たちが真に理解できたとき、もっとアーティストとして成長させられるでしょうね。
(文=Leoneko)

アリス十番 ヘヴィメタルアイドルユニット。メタルを基調とした楽曲と、アイドルなのにお面をかぶって出てくるというパフォーマンスが話題を呼び、現在地下アイドル界で人気急上昇中! そのほかにも本文にもあるような異色のイベント・パフォーマンスで話題を呼び続けている。メンバーは藤崎麻美、麻友美、森カノン、桐谷真央、早瀬愛夢、渡辺まあり、立花あんな、桜のどか、塩谷彩香、月村麗華。オフィシャルサイト

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