華山みおの物語探索その20

『の、ような。』(麻生海)見ず知らずの子供たちとの同居生活が問う人間とは、人生とは?それぞれの成長を描くハートフルストーリー!

 環境の変化とは、突然やってくるもの。もちろん、年度の移り変わりや季節での変化などわかっているものもあるけれど、自分の意志とか、心の準備とか予測とか全くしていなかった場合の変化も人生の中では起こるものです。

 私は変化が怖いと思い込んでいる節があります。 環境が変わること、今いる場所今ある関係がかわっていくことに対してものすごく不安を感じ、あわあわと心配してばかり……。まだ起こっていない変化を想像して怖がっても仕方がないのですけどね。

 今回レビューする麻生海先生の漫画『の、ような。』 は、とあるカップルの人生に予想もしなかった変化が起きたお話です。 

 あらすじはこちら。


 それは人生の劇的変化…。一人暮らしの希夏帆(きなほ)の前に恋人・愁人が連れてきた二人の少年。二人は愁人の親戚で両親を失ったばかりの兄弟だという。希夏帆の家で生真面目な中学2年生の冬真、天真爛漫な5歳の春陽、そして愁人の4人は同居生活をすることに。戸惑う日々の中、彼らの新たな関係が始まる――


 突然、見ず知らずの子供2人との同居生活が始まるって……。職場環境が変わる、とかじゃなくて家族構成がある日突然変わってしまうっていうのはもう、想像しうる出来事ではないですよね。しかも責任を負う立場になるわけだから。

 主人公の希夏帆(キナさん)はもちろん、両親を亡くした兄弟2人、恋人の愁人さん、この4人が一緒に変化に向き合っていく様々な場面にハッとさせられました。

 特に、主人公のキナさんの対応の仕方。恋人はいても、独身で、文筆業の彼女は基本的に自分のために時間を使っていました。それがまだまだ目が離せない5歳児と、思春期真っただ中の中学生男子の面倒を見ることになる……。

 私は何でも自分に置き換えて考えてしまうのですが、私この時点で引き受けられる自信が全くないです……。いや、もちろんキナさんも自信があって受け入れられたわけではないのですが。そうせざるを得ない状況になったとき、キナさんは戸惑いつつ、手さぐりをしつつも、的確にていねいにひとつひとつの事柄に対応していくのです。その対応の仕方がとても真摯で見ていて安心するし、自分が同じ立場になった際に自分もそう在りたいと思わされます。 

 なんというか、「頑張って私がこの子たちのお母さんにならなきゃ!」という感じではなくて、大人として、他人ではあるけれど一緒に暮らす者として、「一緒に考えよう」ってスタンスなのがとても素敵だなぁって思います。引き取ってくれた大人がキナさんみたいな人で子どもたちはとても良かったのでは……。

 子供だから、というような対応ではなく個人として尊重してくれて、かつ子どもの特権もちゃんと確保してあげることって結構すぐには出来ないことだと思うのです。私だったら絶対こんな風にできない気がする……。 

 この作品には幼児、思春期の男の子の成長、学校生活、同性同士で子育てをしている家庭、シングルマザー、ママ友、物語の中心にある家族以外にもそれぞれが関わる間柄にも多様な人間関係が描かれていて、今まで自分の周りにいなかったコミュニティを知るきっかけ、考えるきっかけをもらえます。

 キナさんを通して、変化を受け入ること、人を受け入れること、対応すること、意志を伝えること、自分と相手とのかかわり方など、生きる上で自分にも起こり得るけど、何が正解かなんて一概に言えないことのヒントが散りばめられています。

 この作品、ドラマ化してもらいたいなぁ。色んなことが詰まっていて、たくさんの方に読んでもらいたい作品です。オススメ!!
(文=華山みお)

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の、ような。 1巻
掲載誌/レーベル:ラバココミックス
著者:麻生海
出版社:芳文社

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