『少女支配』(筒井いつき)漂う陰鬱感…人を殺して幸せになれるのか?少女特有の脆さが鬱をさそうゴシックロマンス!

 若かりし頃の失敗談というのは誰しもが持っているだろう。例えば厨二秒全開だったり、本当はないのに霊感があるふりをしたり、恋人をとっかえひっかえしていたり……。

 そんな若気の至りなどなどをいまは“黒歴史”という便利な言葉で表現できるのであるが、とてもとても黒歴史に含むことができない失敗談というのもあるだろう。

 墓場まで持っていかなければいけない秘密。例えば人を殺してしまったとか。

 そんな秘密を抱えた少女の物語を今回は紹介しよう。筒井いつき氏の『少女支配』である。

 以下、公式の紹介文だ。

「今夜、深冬の父親を殺す。」家庭内暴力を受けていた親友を救うため、南波ナオたち同級生3人は、彼女を支配する父親の殺害を計画し実行する。

 完璧な殺害計画で、ついに親友の地獄の日々を終わらせたと思っていた。あのときまでは‥‥。

 この世で一番甘美で醜い、少女たちの『ヒメゴト』がうごめくとき、美しき友情が静かに腐っていく。愛憎渦巻く青春ゴシック・ロマンス


 まだ1巻しかリリースされていないが、非常に重苦しく鬱なマンガである。読んでいて、ハッピーな瞬間が非常に少ない。徹底して漂う陰鬱さ。これが『少女支配』の最大の魅力であり、紹介文にあるゴシックたるゆえんと思われる。

 暴力的な父を殺害し、幸福を得たはずなのに、一向にそう思えない。罪の意識と、一生隠し通さねばならない究極の秘密と向き合う日々。

 登場する少女たちはそれだけでなく、個々の悩みを抱えている。恋人関係であったり、先生との関係であったり。

 女子高生という人生でたった3年しかないブランドを少女たちは弄ばれてしまう。少女特有の脆い感性と依存性により、性玩具の対象とされてしまうのだ。

 徐々に忍びよる警察の影に怯え、何かにすがりながらも懸命に生きようとする少女の姿に胸が痛い。

 しかし、この物語には既視感がある。内海八重氏の『骨が腐るまで』だ。

 『骨が腐るまで』にも独特の陰鬱感が漂いつつも、必死に現実に抗おうとする姿が描きつつも、あっと驚く展開が二転三転するミステリー要素も満載の一級エンターテイメントサスペンスであった。ラストは駆け足でやたら説明的な展開がされたものの、社会的にも納得がいき、余韻のある美しい帰結を迎えた傑作であった。

 『少女支配』は父親殺しの秘密を守るという点で同じものの、ミステリー要素はいまのところ感じられない。それよりも少女の脆さ、弱さを耽美的に描いた作品といえよう。

 一読者としては彼女たちに幸せになってほしいと願うが、今後どうなっていくのか。さらなる鬱展開しか予想できないが、2巻発売が非常に待ち遠しい。
(文=Leoneko)

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少女支配 1
掲載誌/レーベル:eヤングマガジン
著者:筒井いつき
出版社:講談社

骨が腐るまで 1

骨が腐るまで 1

まじで名作です。

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