ハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』と押井監督のアニメ版は西洋医学と東洋医学ぐらい違う!?

ハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』と押井監督のアニメ版は西洋医学と東洋医学ぐらい違う!?の画像1おかっぱヘアの少佐を演じたスカーレット・ヨハンソン。体にぴったりフィットした白いボディスーツがエロい!

 東洋人と西洋人との思考性の違いなのか、それとも監督の作家性を重んじる日本のアニメーション業界と世界配給を前提にしたハリウッドスタイルとの違いなのか。押井守監督の劇場アニメーション『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95年)がスカーレット・ヨハンソン主演の実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』となって全米で3月31日、日本で4月7日より公開されたが、オリジナルアニメ版とハリウッド実写版には大きな大きな隔たりがある。

 士郎正宗のコミックを原作にした押井監督の『GHOST IN THE SHELL』では人間の義体化(サイボーグ化)が進み、人間の脳とインターネットが直接繋がる近未来社会が描かれ、『マトリックス』(99年)のウォシャウスキー姉妹や『アバター』(09年)のジェームズ・キャメロンなど海外のクリエイターたちに多大な影響を与えたことで知られている。SFアクションアニメとしての面白さに加え、人間の身体の人工化が進んだ場合、人間と人工物とのボーダーはどこにあるのか、またひとりの人間としてのアイデンティティーはどうなるのかといったテクノロジーの進化に伴う哲学的なテーマが物語の核となっており、アニメ版の公開から20年以上が経った今でもカルトな人気を集めている。

 スティーブン・スピルバーグからのオファーを受けてハリウッド実写版の監督に起用されたのは、CM業界でキャリアを積み、お伽噺“白雪姫”をヒロイン活劇ものに仕立てた『スノーホワイト』(12年)でハリウッドに進出した英国人ルパート・サンダース。脚本チームには『ザ・リング』(02年)や『トランスフォーマー リベンジ』(09年)など日本発コンテンツのハリウッド翻訳もので実績のあるアーレン・クルーガーらが参加。主人公たちが所属する「公安9課」のボス・荒牧にビートたけしをキャスティングし、アニメ版でもおなじみ熱光学迷彩シーンやクモ型戦車とのバトルシーンも用意されている。押井監督の『GHOST-』と『イノセンス』(04年)だけでなく、『攻殻機動隊』シリーズすべてを熱心に研究したことが伺える。

ハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』と押井監督のアニメ版は西洋医学と東洋医学ぐらい違う!?の画像2『アベンジャーズ』シリーズで鍛えたスカジョの体を張ったアクションシーンは、ハリウッド大作ならではの迫力。

 ハリウッド実写版の主人公は草薙素子ではなく、所属先の「公安9課」では“少佐”と呼ばれている。腕利きの捜査官たちが集まった公安9課の中でも少佐(スカーレット・ヨハンソン)は脳みそ以外すべて義体化されており、並外れた捜査力・格闘能力を誇っていた。そんな少佐の悩みは、自分が義体化する以前の記憶はほとんどなく、本名すら分からないということ。義体化されたボディも政府から支給されたものであり、自分のものではない。アイデンティティーに関する不安を感じながらも、同僚であるバトー(ピルー・アスべック)たちと凶悪犯罪に立ち向かっていた。ある日、他人の脳をハッキングして自在に操る謎のサイバーテロリストが現われる。サイバーテロリストを追い掛けるうちに、少佐は自分が持っている僅かな記憶も他者によって操作されたものではないのかという疑念が強まっていく──。

 オリジナルアニメ版へのリスペクトは充分に感じさせるハリウッド実写版だが、電脳化が進んだ同じ近未来社会を舞台にしながらも、押井監督とはまったく別解釈による作品となっている。押井監督ならではの観念的な色合いはほとんど消し去られ、なぜ主人公は草薙素子ではなく少佐と呼ばれているのか、さらには少佐の生い立ちから、義体化された経緯までがすべてクライマックスで明かされるというサスペンスタッチの構成。少佐が自分自身の正体を解き明かしていく過程は、スカーレット・ヨハンソン版『ロボコップ』(87年)かと言いたくなるほど、少佐のプロフィールを丸裸にしていく。押井版とハリウッド実写版は同じ『攻殻機動隊』を題材にしながらも、東洋医学と西洋医学ぐらい大きく異なる。

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