『孔雀王 戦国転生』(荻野真) 今度こそ、ちゃんと完結してくれるよな? 

『孔雀王 戦国転生』(荻野真) 今度こそ、ちゃんと完結してくれるよな? の画像1『孔雀王 戦国転生』『孔雀王 戦国転生』(荻野真) 今度こそ、ちゃんと完結してくれるよな? の画像2(荻野真/リイド社)

 先頃、ようやく第3巻が発売された荻野真『孔雀王 戦国転生』(リイド社)。けっこう「ようやく出たか……」とホッとした読者も多いのではないだろうか。現在、連載されているのは隔月刊誌「コミック乱ツインズ 戦国武将列伝」。掲載誌で読みたいというファンには2カ月に一度の楽しみ。単行本でという人は、もっと長い時間を待たされてしまうのである。

 そもそも、この「コミック乱ツインズ 戦国武将列伝」という雑誌、戦国風だったらなんでもよいのかという具合で、岡村賢二や長谷川哲也といった熱い描き手の一方で、あさりよしとお、楠桂も連載しているという、ラインナップだけでも面白すぎる雑誌である。

 そんな雑誌に掲載されている『孔雀王 戦国転生』。戦国時代にタイムスリップした孔雀が織田信長や木下藤吉郎(豊臣秀吉)、徳川家康などと出会って始まる物語である。もちろん、内容は荻野ワールド。秀吉はガチで猿だし、家康に至っては吸血鬼である。それどころか、信長の正室・濃姫に至っては、斎藤道三のつくった式神だったのである。そして、驚くのは単行本第2巻で匂わされたラスボスの正体は……聖徳太子なのだ。

 いったい、どうなってるんだ! そう読者を驚かせるハッタリに充ち満ちた物語。単行本第3巻の巻末に記された、連載が始まった経緯によれば「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた『孔雀王 曲神紀』(集英社)が打ち切り後、新たなジャンルに挑戦しようと思っているのに、誰もが「『孔雀王』の続きを描いて」という状況。半ばヤケで戦国時代にタイムスリップネタで描くことにした経緯を、マンガ的にアレンジして記している。

 思えば『孔雀王』が大団円を迎えた後に始まった続編『孔雀王 退魔聖伝』は、本題である日本神話の神々との戦いの半ばで中断。その後十数年の時を経て連載された『孔雀王 曲神紀』は、いよいよ登場人物も出そろったと思しきところで、まさかの「俺たちの戦いは、これからだ」的に終了。主要人物のほとんどは戦いの途中で気を失ったままだし、シリーズを通してのメインヒロイン・アシュラは、ほとんど登場していないまま。さすがに、後書きでは無念をにじませていた。

 そんな経緯もあってか『孔雀王 戦国転生』は、作者が好きなことを描けているという楽しさがビンビンに伝わってくる。荻野作品の魅力の一つであるバイオレンスとグロだけでなく、登場人物たちが時にコミカルに描かれているのもポイントが高い。月並みな言い方をすれば、円熟味が増した作品だといえるだろう。前作『孔雀王 曲神紀』のラストで描かれた日本神話の神・イザナギとの戦いから、いかにして戦国時代へと飛ばされたのか。なぜ聖徳太子が、その元凶なのか。そうした謎を、どのようなハッタリでまとめていくのか気になってしようがない。

 荻野作品で、聖徳太子がラスボスと聞いて思い出すのは『孔雀王 退魔聖伝』の後に連載していた『夜叉鴉』だろう。この作品、主人公がガッチャマンみたいな装束で戦う神道系退魔作品だったのだが、途中からの超展開がすさまじかった。主人公がライバルキャラに敗北し、死亡したと思ったら復活。かと思ったら舞台が時空を移動して226事件前夜の東京へ。

 そこで出会った宮沢賢治と北一輝も夜叉鴉だった! そして敵のボスの正体は忍者・服部半蔵かと思いきや、その実態はイザナギ。だが、イザナギも操られていたに過ぎず、すべての元凶は「最強の死者」である聖徳太子だった!

 こうして、物語は主人公と聖徳太子が、荒廃した未来の東京で一騎打ちして……めでたしめでたしで完結。筆者は単行本で読んだが、この作品を連載時に読んでいた人は超展開っぷりに、もっと驚いたのではなかろうか。

 とはいえ、そんな超展開を力技でまとめ上げることができるのが荻野真というマンガ家の凄さだろう。今回ばかりは、ホントにちゃんと完結してくれるのか? 気になってしようがない。
(文=是枝了以)

孔雀王 戦国転生(1)

孔雀王 戦国転生(1)

今後の展開も楽しみ!

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